2つの日記の掛け合いで始まるこの作品、主人公の年齢が高いのが特色。一方の主人公は50代、もう一方の妻は40代という設定である。お互いが秘密裡に日記を書いているのだが、どちらも相手がそれを盗み読みをしていることを分かっていながら、相手に間接的に語り続けていて、それがどんどんエスカレートしてくる形になる。
基本的には主人の性的な欲求が、お互い考えていなかったであろう方向に2人を導き、果てには主人公の男性は斃れ、2度目の発作でこの世を去ってしまう。
この作品は戦後に書かれたもので、「
細雪」よりも後。主人公の年齢が50代と高いのは谷崎の晩年の作品だからだろう。なんとなく有名な作品のような先入観があったのだが、他の作品とはちょっと経路が違う。性的な欲望の話というよりも、むしろ人生とか死が根底に流れるテーマのように感じた。
どちらの主人公も現実離れした存在であるし、この作品のような日記というのも考えにくい。これは、この物語を書くために必要最低限のことのみに内容をそぎ落とした結果現れたもので、先に書きたいことはハッキリ決まっていたのだろう。
面白かったか?というと、それほどでもなく、好きな作品とも言いがたい。今のところはやはり「痴人の愛」や「細雪」を先に読むのがよいかと思う。
(2006/08/28)
鍵
谷崎潤一郎