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蟹工船・党生活者
蟹工船がリバイバルしているらしく書店でも平積みされたりしている。日本史の教科書に登場する作品だが読んだ事はなかったので読んでみる事にした。

蟹工船は書き出しから、ずいぶんと荒っぽい言葉が飛び交う。北海道の海(オホーツク海あたりか?)で操業するカニ漁、缶詰作りの船での過酷な労働環境が描かれる。その状況は奴隷と同じといってもいい。監視のものは暴力を振るい、逃げ出すこともできない。

そんな中で労働者が立ち上がることに希望を持って書かれたのがこの作品である。なるほど、資本家の搾取に対して大勢の労働者が一致団結して立ち向かい、自分たちの権利を獲得するのだという考えが生まれてくる事は良くわかる。奴隷解放と同じと考えれば分かりやすい。

反面、文学作品として価値が高いかどうかは良くわからない。激しさはあるものの、情景が的確にあわらされているわけでもないし、船で働かされている人達の心境の変化がそれほどうまく書かれているは思えなかった。やはり政治活動のネタに見える。

* * *

蟹工船は短いのでさっと読み終わった。同じ文庫本に収録されていたのが「党生活者」である。こちらの方が蟹工船より長く、個人的には面白く読めた。文章はこちらの方がうまい。

「党生活者」の党は共産党で、とある軍需工場での人員削減に対し、労働者のストライキを組織しようと活動する工作員の筆者の記録である。多少脚色はしてあるものの、基本的には小林多喜二の実体験に基づくものと思える。

共産党は当時非合法にされていたため、現代で考えてみるとそれほどのことでもなく見えるものを、自ら非合法活動と認識し、逮捕されれば拷問や5年以上もの懲役を覚悟してやっている。地下組織とかいったものは、これほどの使命感の元行われているのかと再認識させられる。そこには自己の私生活はまったくなく、すべてが思想のために捧げられている。ちょっと今日は気分転換に美味しいものを食べに行こうなどといったものが皆無なのだ。

文章は実に淡々としていてかつ冷静に書かれているように思う。現代の文章なのではないかと思うほどスラスラ読める。

* * *

どちらも一読の価値はあるとは思うけれど、ここからさらに掘り下げるほどの興味は持てなかった。

(2008/11/13)

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