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自転車五大陸走破
- 喜望峰への13万キロ
井上洋平

私も自転車旅行が好きで、日本国内や海外を自転車で旅した事がある。もちろん、この筆者に比べようもない小さなスケールだ。そんなこともあって、私は旅行記、特に一人旅の記録が好きだ。

旅のはじまりのアラスカでの話は、自分が旅をするときのことのように読める。未知の世界への不安だ。そして、それはやってみれば誰にでも乗り越えられるものだと言う事も、読みながら再体験できた。

旅はそこからカナダ、アメリカへと進む。筆者の旅への不安はなくなっていくのだけれど、それに反比例するかのようにさまざまな危険に晒されて行く。キャンプをしていたときに熊に遭遇していたこと、アメリカではパトカーの警官にホールドアップされること、など。

そして、旅は南米、ヨーロッパ、中東そして、アフリカへと続く。旅のそれに呼応するかのようにどんどん困難になっていく。南米で共に走った友人は、その後、登山で帰らぬ人となってしまう。峠の厳しさ、番犬に追われたり、高山病に掛かったり。軍事政権下では監視塔から発砲され、極めつけにアフリカでは内戦のザイールでマラリアと戦う。ライオンに襲われるのではないかという恐怖に怯えながら30kmを走行するなど、苦難の連続だ。

そして世界各地の人の優しさにも触れていく。旅の醍醐味だ。6年にも渡る旅を1冊の薄い新書にまとめているから、大きな出来事が起こらない日常のことはほとんど触れられていないけれど、それこそが人を旅にかり出す原動力だと思う。

この本を読んでしまうと「深夜特急」などは霞んでしまう。筆者が体験したことの度合いが違いすぎるのだ。しかし、読み進めて行くと、ちょっとした違和感を感じた。

旅が困難なことはわかる。そしてそれに挑戦することの気持ちもある程度わかる。しかし、ここまで来るとこの旅を終えられたことは運が良かったからと思えてならない。一歩間違えば命を落とす場面を「運が良く」乗り切るまでの旅をするべきなのかなとちょっと疑問に思った。運が悪ければ無謀な旅行者と言われてしまう。運を天に任せてまでやることだとは私は思わなかった。

(2009/01/24)

English version: Run the whole five continents
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