胡蝶の夢 
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この物語は幕末を舞台に、幕府に仕えた医師良順と、その弟子伊之助を主人公に繰り広げられる。

日本の歴史で文句なしに一番面白かったのは戦国時代。しかし、それに勝るとも劣らないのが幕末であることを再認識した。「龍馬が行く」はその時代を舞台にした司馬遼太郎の作品だが、この胡蝶の夢もほぼ同時期を別の主人公を使って描いている。

相変わらず膨大な歴史考証があったことを暗示させる濃い内容のためか、読み始めるとすぐにこの世界にのめりこむことが出来た。

日本の玄関口は出島のあった長崎。ここにポンペという医師が送り込まれてくる。良順はそのポンペを教師とした医学伝習所を開く。医学などをはじめとしたヨーロッパの技術の流入への欲求が、その背後にあるヨーロッパの市民文化をも日本へ伝え、江戸時代を支えた身分制度の崩壊へと導く。

数百年の鎖国のうちに、科学技術は西洋世界の方が進んでしまったのは当時の日本人にとっても明らかだった。黒船の来航に驚いた幕府は体制を維持しつつ技術を取り入れようと大きく舵を切るものの、それはあまりに無理な相談であった。

4巻組みの後半に向け、徳川慶喜の登場、大政奉還、鳥羽伏見の戦い、そして江戸城開城と江戸時代は終焉を向かえ、明治時代が始まる。

司馬遼太郎作品とは相性が良いのだが、この本は今まで読んだ中で一番平凡だったように思う。主人公たちが歴史の頂点に現れたような坂本竜馬ほどのカリスマを持たず、またそれぞれの主人公同士の話のつながりが後半特に薄く、話が散漫になってしまった感じがした。司馬遼太郎作品を読みつくしているのでなければ、「竜馬がゆく」をお勧めしたい。

(2007/01/29)

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