考えるヒント
考えるヒント 小林秀雄
久々に小林秀雄の本を読んでみた。この「考えるヒント」は「本居宣長」、「人生について」に比べると随分読みやすかった。この本も「人生について」と同様、新聞・雑誌に掲載された批評を集めて編集されたものだが、内容についてはバラバラでいくつかのテーマに分けて考えてもよい。
前半はテーマさえ散っているものの(例えば平家物語とヒットラーが並んでいる)、中身は面白いし、タイトルの通り、考えるヒントになる。考えるきっかけという面ではネタが多い。そして、後半に進むにしたがって読みやすくなってくるものの、普通の話に近づいてくる。特に終盤のソビエトの話のあたりはエッセイに近い。
今回は、たまたま司馬遼太郎の「司馬遼太郎が考えたこと」という同種の本を読んだ後に読んだので、その対比が面白かった。司馬遼太郎の語り口と小林秀雄の文章は、とても対照的で、一方は一般人にやさしく語りかけているのに対し、こちらは彼の頭の中に出てきたものを紙に落とした感じである。読みやすさはそれほど考えられていないようにも思う。しかし、そうは見えても小林秀雄の批評文にもある種のやさしい眼がある。難解ではあるものの批判的ではなく良いところを見つけて語っている。
内容の統一感の無さからすると、これは買いとは言えないけれども、払ったお金分の価値はあったので、ひとまず良しとしよう。 (2005/04/26)
