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細雪
とうとう読み始めた。文庫本サイズで上中下の三巻に渡る大作で、本屋の棚でも大いに目立っている。「痴人の愛」、「陰翳礼賛」、「少将滋幹の母」と読んだ記憶があるので、これで4つ目か。

出だしで驚くのはあまりに文章がダラダラと続くことで、1ページの半分が1つの文章だったりするので、「おいおいどこまで続くのだ」と思ったり、会話のカギカッコがなくて、句点で区切られてそういう風に見えるのかと思いきや、カギカッコでちゃんと分かれているところもあったりして、それはそれは不思議な文体である。文章が不必要に長い感じがするのだけれども、なぜか読みやすい。「痴人の愛」を読んだ時に感じた流れる文章の感覚を再び感じる。

登場人物の性格付けがとてもはっきりして、それぞれ大変個性的である。

上巻で印象的だったシーンは、四人姉妹がお花見に出かけるシーンである。桜の描写と四人姉妹の描写が実に見事だった。

主なテーマではないのだろうけれども、大阪と東京の比較が何度か見られた。谷崎氏は大阪の方の人なのだろう。そして、昔は東京は昔は何にもなかったところだと言う意識が強かったように思える。(とはいっても江戸として町が栄え始めて300年は経っているのだが)。東京のステータスが今のように高くなったのは戦後のことだということが良くわかる。

もう1つ当時の世相をあらわしているものは、結婚のとき、当人だけではなく、血筋の身辺調査をしていることだ。4人姉妹の1人、雪子は何度かお見合いをするのだけれども、その度に相手のことを調べるし、また相手も雪子たちのことを調べてからお見合いに望む。一番下の妙子の結婚話も今度は身分という問題がまわりの意見を振り回す原因となる。写真屋で勇敢な男は相手としてふさわしそうなのだが、丁稚上がりということでみんなの反対に合うし、ダメ男でも家柄がよければ結局こちらと結婚してもらった方がという周りの意見となる。これは今の感覚からすると随分かけ離れているように感じる。

中巻の主人公は妙子であり、序盤で水害のシーンが登場する。妙子がそれに巻き込まれ、貞之助が助けに行くのだがその臨場感はなかなかのもので、この部分は古い作品であるものの、現代小説のような読み心地である。

この四姉妹は実際は東京にいる長女の鶴子を含めた四姉妹なのだが、ストーリー的には、長女が抜け、逆に次女幸子の娘、悦子が入った4人となっていることが多く、それがとてもバランスが良かったりもする。

下巻に至ると、雪子の見合いが中心となる。大人しい雪子と活動的な妙子が大変対照的だ。

この「細雪」は戦中に書かれたこともあり、発禁処分を受けているが思想的に反体制的なところがあるわけでもなく、それだけ激しい言論統制があったということを物語っている。そして、その影響もあってか、谷崎の作品であるが恋愛描写は非常に淡白である。そこが一風異なる雰囲気を醸しているし、細雪の良いところでもある。

文庫本では、上中下の3巻に分かれたものと分厚い1冊のものがあるが、3巻組を勧めたい。活字の大きさと、本の重さが理由だ。

2003/04 - 2003/06

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