砂の城
砂の城 遠藤周作 新潮文庫
またも久しぶりに作品を読んだ著者の一人、遠藤周作である。中学校の読書感想文以来だ。この「砂の城」は代表作の「沈黙」と違って、宗教色は極めて薄かった。これは3人の若者と、母の若き日の思い出を綴った青春小説だ。
特筆すべきは冒頭の母の手紙の部分だろう。戦争の時代を生き抜いた母が、その娘に当てた手紙で、16歳になったら本人に見せて欲しいと託したものである。戦地に愛する人を送り、それを待つ気持ち、想い出の場所と、美しい日本語で綴られている。この部分は秀逸だ。
そして、その手紙を受け取る娘「泰子」の学生時代の情景もなかなか良いと思う。長崎の風景描写や、大学での英語劇のエピソードは実に生き生きとした印象を与えた。
いくつかのエピソードは、当時(昭和40年代頃か?)に起こった実際の事件をモチーフにしている。日本人の過激派グループによるハイジャック事件や、銀行のOLが横領をしてしまう事件などだ。雑誌の連載であったから、そういった時代背景に即した内容になっているのかもしれない。しかし、今読むと、何となくピンとこないものがある。政治的活動をする学生は極めて少ないような気がするし、トシのような女性も居ないように思える。
2003/06/16
