| トップ | 読書感想文 | Ukki |
海の物語
「海の物語」。単純だけれど、とても興味を惹くタイトルでした。
これも古本屋で買った本です。今回は200円。

灰谷健次郎の小説だと思って買ったので、まったくその通り、安心して読める作品でした。中盤からは一気に読みきれるほど楽しめました。面白いと思います。

主人公の少年健太と、彼を取り巻く友達、先生、そして漁師の大人たちを描いた物語でどうやら場所は神戸のあたりのイメージです。物語中、健太は取り立てて目立つ存在ではないのだけれど、彼が主人公で正解だったのだと思う。

漁師の子という立場は、サラリーマンの息子とはちょっと違った父親との接し方ができる。そして、健太は父の仕事に誇りを持っている漁師の子どもなのである。そういったところがうらやましく思える。実際にそうだったらそうはなかなか思えないのだろうけれど。

最後の方では少し直接的なメッセージとしてあわられてくるが、昨今の漁業の難しさが語られている。魚が取れなくなってきているのは、環境問題が原因でもあるが、一方の漁業の商業主義化にも問題があるということをうまく伝えている。考えさせられるものの、これといってどうしていいものやらわからないのが私の不味いところだが。

健太の友達の可南子がこの小説に登場する人物の中で一番の印象を残す。女の子らしい面もありながら、一方で大変な行動派で、ドキッとしてしまうところもある。そして、担任の紀子先生も、表面的な熱血系ではないものの、やはり行動派の女性である。そういった女性像は他の灰谷健次郎作品にも登場するけれど、やっぱり魅力的な女性の姿なのかもしれない。

物語の終わり方は、大変うまくできているなと思った。多すぎず、物足りなくもならず、とてもよい後味の残し方だったと思います。

本書の解説で、山下明生氏が幾つかの一目惚れ作品を紹介しているので、メモをしておきたい。ピーター・マシーセンの「遥かな海亀の島」と「海に暮らす」、それから灰谷健次郎の「せんせいけらいになれ」と「兎の眼」。これらの作品を読んでみたいと思う。

(2002/12/29)

Top
Index
Search on Ukki

login