死者の奢り・飼育
大江健三郎の短編集。
「死者の奢り」は病院の屍体保管所でアルバイトをすることになった主人公ほか数人が登場する。死んだ人間が徐々に物体となっていくことなど。「飼育」も無常観が底に流れる。
大江健三郎の「ヒロシマノート」を読んだとき、なんと句点の打ち方の変わった作家だろうと思ったが、この本に収録されていた作品からはあまりそれは感じなかった。
それぞれの作品で文体が微妙に違っているのだが、どれもとても独特だ。ひとつ感じたことは、時を追っていく目に比べて頭の理解が付いていかず字に引っかかってつっかえている感覚があった。
表現は皮膚感覚的。色があるというよりも、ねっとりと触れているような感じとでも言えばよいのだろうか。筆者のうちにもった悶々とした思いが表現されているように思う。決してストレートではなく、何か明示的にメッセージを送られているわけではないけれど、それを感じる。
(2007/02/28)