数年前に映画化されたこともあって、「模倣犯」はかなり知名度の高い作品のように思う。ボリュームも分厚いものが上下2巻、しかも2段組と相当な量である。読むには少々覚悟が必要だ。
ここまで宮部みゆきの作品を4冊読んで共通して受ける印象は、作品が長いと感じることだ。メッセージ性はあるのだけれど、そのメッセージを発信するのに使われる文章の量が多いということだ。
そしてこの作品に限っていえば、宮部みゆきの作品にある、登場人物の根の良さというものがあまり感じられなかった。
上巻は連続殺人事件を起こした犯人のペースで物語が進行する。かなり残酷な記述が多いのだが、過激な記述をして話題性を集めるような感じを持ってしまう。不必要に過激である。
下巻に入ると、犯人が大きく活動を始める。ここが模倣犯たる所以ではあるが、話が非現実的になってくる。上巻の緻密な計画に比べて、下巻の行動はかなり杜撰でかつ話は都合が良く進んでしまう。
そしてもっとも不満な点は、最終的な結末があまりに突然に簡単に終わってしまうことだ。この題材であれば、犯人をじわじわと追い詰めて、犯人はそれをなんとかかわそうとする展開が可能だと思うのに、あっけない結末で終わってしまう。
ここまでの批判を考えてみると、この作品が週刊誌への連載だったことが理由のように思える。宮部みゆきの作品では、数多くの登場人物が入れ替わり立ち代り、スポットライトの下に現れる。その時点ではその人物が主人公である。これは連載に適した構成なのだろう。しかし、全体を通じてのストーリーを伝えるには、その連載の回ごとに視点があっちにいったりこっちにいったりすることで、全体の流れに余計な尾ひれがついてしまうようである。全体構成が完全に決まっていないうちに書き始め、登場人物が勝手に物語の中で動き出すタイプの作家なのだろうと思った。
量は多いもののストーリーはお粗末だと思う。断片を取れば面白いところもあるのだが、「理由」や「レベル7」の方が評価できる。この本はお勧めしない。
一覧に戻る 2003/10/13 #### imported