智恵子抄
高村光太郎の詩は有名で、この智恵子抄は代表作である。 特にこの詩集に収録されている「レモン哀歌」は特に有名である。
いつどこで読んだのかは覚えていないが、きっとこれも教科書に載っていたのだろう。 どこかで習った気がする。しかし、教科書ではこの「レモン哀歌」が単独で登場するので、その背景は知る由も無い。妻の智恵子が亡くなり、そこにレモンを置く理由がわからなかったのだ。
今回、この詩集を通して読んでみて感じたのは、智恵子の死を挟んで、高村光太郎の作風が大きく変わっていることだった。智恵子との暮らしの間に書かれた詩は情熱的で、熱い愛情表現の連続である。しかし、「レモン哀歌」という一時停止と、転換点を経て、しっとりとした落ち着いた詩に変わっていく。智恵子への想いはやはり強いのだが、悲しみよりも遠くの恋人を思うようなやさしさを感じるものへとなっていったようだ。
詩の後には、智恵子の半生という文章が載っている。こちらも客観的にも見えるほどに落ち着いた口調で書かれており、光太郎と智恵子の人生を語り、この智恵子抄を理解する手助けになる。
「レモン哀歌」をもっと味わうことができたという意味で読んだ価値は大きかった。また、それ以外にも「智恵子は東京に空が無いといふ、」で始まる「あどけない話」など、印象に残る詩が何篇かあり、読んで得した気分になった。お勧めしたい。
「智恵子抄」高村光太郎 新潮文庫 400円
(2003/09/10)
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