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星の王子さま
もっと早く読んでおけばよかった。

サンテグジュペリといえば「星の王子さま」、というより、これしか知られていないに近いのだろう。先に読んでいた2作とはスタイルが全然違うし、挿絵が可愛らしいので買ってしまう人が多いのだろうと思っていたので、強いて読もうとしていなかった。でも、そう考えていたことを後悔させるほど、この作品はわかりやすくて、心に届く作品だった。世界的な名作にはやっぱり理由があるのだ。

サンテグジュペリの作品は、男気溢れる勇敢な人間が、自然と対峙し孤独と戦うというものだった。それに対し、「星の王子さま」は全然違った寂しく優しい物語かと思えるのだが、根底のところでは共通するところが多い。

この物語の核心は、王子さまとパイロットの男が砂漠で出会う場面。この場面は彼自身が経験したもので、「人間の土地」でも題材に使われていて、彼にとって重要な出来事であった。その出来事と、子供の頃の心、大人になった自分が組み合わさって生まれたものだ。対話をしている2人の登場人物は、どちらもサンテグジュペリ本人のように見える。

子供の純真な気持ち、大人になってしまった人間。この2つが唯一のテーマかと思えば、それは物語のラストに向けて、もう1つのテーマにうまく取って代わられる。王子さまはいなくなってしまうのだが、これは生きて残るものと、死んで去ってゆくものとの別れを表現している。そして、星空を見上げれば、また微笑むことができるようになるよと。

王子さまが自分の星を出て、地球にやってくるまでに立ち寄ったエピソードは、どれも心を失った大人たちだ。やわらかく皮肉っているのか、落胆しているのか、それとなく伝わるような書き方だ。

もう1つ書き残しておきたいのは、王子さまの星に咲く花。こちらはどうみても女性を表していて、その表面的な強がりと、うちに秘めた弱さがうまく出ていると思う。

さて、原題は"Le petit prince"で直訳するとThe Little Princeである。それが「星の王子さま」と訳されたわけだが、この本を読めば、見事な訳だということがわかるし、納得できるだろう。

サンテグジュペリの他の作品も面白いが、この作品は必読。500円弱と数時間の時間で、きっとほかでは得られない満足があると思う。河野万里子さんの訳も良いので、是非日本語で読んでみてほしい。

「星の王子さま」
サン=テグジュペリ
河野万里子 訳
新潮文庫
476円


(2006/12/15)
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