愉楽の園
久しぶりの宮本輝作品で、舞台はタイ。
主な登場人物は二人の日本人男女、そしてそれを取り巻くタイの人々である。
外国の街と日本人という組み合わせは宮本輝の十八番であり、この作品はその設定がかなりうまく行っているものだと思う。言い換えれば、取ってつけたような取材臭さが比較的薄いのだ。
主要人物である日本人の男性野口は放浪の旅をしてタイにたどり着いた。その姿が「深夜特急」の主人公に重なってしょうがなかった。旅人誰もがああいう雰囲気を醸すのだろうか。
野口に限らず主な登場人物は、人間の弱い部分、堕落した部分を持っている。それを否定することなく描写している。誰にでも弱いところはある、完全な人間などいないとでも言わんばかりである。
ストーリーの結末は意外な方向にいくと見せかけて最後の最後でひっくり返った。予想できない展開であった。中盤以降はミステリー物を読んでいるような錯覚を覚える。複雑な事件、陰謀があり、その中で登場人物たちが裏をかいた行動を繰り広げる。
2003/06/26
