情と理 後藤田正晴回顧録
情と理 後藤田正晴回顧録 (上)(下) 後藤田正晴、政策研究院政策情報プロジェクト
2005年にこの世を去った後藤田正晴という政治家のインタビューをまとめたもの。
政界を引退したのが1996年で、それ以降、政界のご意見番と呼ばれるようになってからの活動を見て、まっとうなことを言う人物だったので興味を持って読んでみた。
しかしながら読んでみた印象は意外だった。むしろ、いわゆる日本の政治の本道を歩んできていた政治家で、良くも悪くも官僚出身、自民党的な印象を受けた。戦前の内務省の官僚から、戦後は警察庁長官まで上り詰め、政界に転身。そして、田中派の重要人物として派閥抗争を間近で見てくる。総理大臣が決まるプロセスなどを見れば派閥政治がこうやって動いていたのかと分かる反面、なんだかなぁという感想も持つ。そして、数々の政治家のスキャンダルについても決して悪いとは言わず、運が悪かった、あるいは逮捕され有罪になっていても悪いことをしたからだという意識はないのだろうと思われる。長年の仲間が槍玉に挙げられていること、自民党スタイルの政治では避けて通れないことだったのだろうということなどから、分からないでもないが、後藤田さんは別格の政治家であったわけでもないことが見て取れる。
1つだけ記しておきたいのは自衛隊の海外派遣には一貫して反対する姿勢をとっている。これは警察権力に対する自己抑制についても同じ。どちらにしても、その成り立ちにかかわっていること、そしてその中にいたものとして、権力の暴走に対する抑止を常に考えていたのだろう。これは戦争経験者だからのような気もする。
いずれにしても生に近い姿が垣間見られたことが収穫。それなりに面白かったがイメージとのギャップもあってか、普通の力を持った政治家だったんだなぁという少々残念な印象でもあった。
(2007/01/03)