| トップ | 読書感想文 | ニュース | Ukki |
劇場
サマセットモーム円熟期の長編作品の「劇場」は、あるイギリス人女優の半生を通して、さまざまな人間の愛を描いた作品である。モームらしく、主人公のジュリアは、清らかなというより、とても人間味のあり、少々毒の効いた主人公として描かれている。女性の怖さを感じさせるのは例えばこんなところ。若い頃、その美貌に魅せられて熱を上げ、ようやく結婚に持ち込んだ相手が、従軍のためしばらく離れて暮らし、戦争から帰ってきた時、その主人が中年になっていたことで、突然愛情を感じなくなってしまう場面。そして、その先に走るのは、若い男性のトム。上流社会への足がかりを求める、どちらかといえば、ちょっと品のない男と、夫に失望したジュリアの恋愛はモームの筆が冴えるところ。長編だけあって、この展開も面白く、濃密な内容の作品となっている。

ジュリアは人生を演じていて、それは舞台を降りてからも演技なのである。どこからどこまでが演技なのか、その境目がもしかしてないのではないかということを、息子からの告白で突きつけられる。しかし、それこそが、ジュリアという人間なのだということに彼女は気づき、満たされない求める愛からの昇華を見事に果たす。

最後のシーンであるジュリア勝利の晩餐はまさにこの作品のクライマックス。ビフテキが象徴的に表現に使われている。

これは傑作といってよい。面白いので文句なくおすすめできる。
(2008/03/24)

読書感想文に戻る



Top
Index
Search on Ukki

login