人生について 
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人生について 小林秀雄 中公文庫

この「人生について」は小林秀雄が新聞・雑誌に発表した文章を集めて出版されたものであり、「人生について」という書き物ではない。数にして21篇だが、そのうち2点、表題に一番近い「私の人生観」と「セザンヌ」についてが印象に残った。

小林秀雄の文章は大変難しく、読んでもなかなか頭に入ってこない。その理由はわかりやすく書こうという考えがなく、考えたことを頭の中から紙に直接吐き出したような構成になっているからである。文章で話されていることは右に左にめまぐるしく変わっていき一貫性がないし、主題から離れた脱線の部分が多い。

しかし、この人はいろいろ考えたのだなぁと感じさせる部分は多い。1つの事柄、ひとつの人物について調べ上げるだけでなく、それをもとに考える、その考えた事柄の量の多さというのはその文章から伝わってくる。この人でなければこういう考え方はできまいと思える。

一度この本を読み終えた時点では、なんだかよくわからないままに終わってしまった。しかし、ショウペンハウエルの「読書について」で、本は続けざまに二度読むことで理解が大幅に進むという箴言があったので、それを実践することにしてみた。

二度目に「私の人生観」を読んでみると、1度目に頭に入ってこない理由がわかり、その上、1度目に比べればはるかに良く小林秀雄が言わんとしていることがハッキリわかるように思えた。頭に入ってこない理由の最たるものは、文体の乱れであり、「ですます」調があるかと思えば、突然「〜だ」になったり、もう無茶苦茶なのである。読んでいてリズムが作れないほどである。もう1つの理由は、英語風にいえば、’which 〜’というように、文章の一部分を説明する節の係り受け構造が1文の中に複数回出現するため、それを頭の中で積み上げる作業を必要とする。そのためにわかりにくい文章になっている。

しかし、ショウペンハウエルが言う通り、2度目に読むと、話の先の筋が読めているので、話の展開に戸惑うことがない分、非常に良くわかった。しかし、ここでそれを噛み砕いて説明できるほどには理解できていないようで、最後の方はやはりまだ消化不良なところがある。わかった部分で言えば、人生観というのは物が見えてくることなのだということだった。

まわりくどくあちこちに話が展開する上に、肝心なところは直接は触れない。読者に考えさせるスタイルだというところから、とっつきにくいところがある。しかし、彼の考えを読み、それに触発される可能性は高く、そういった意味では読む価値があるのではないかと思う。

前回「本居宣長」を上巻を読み終えたところで挫折してしまったが、今回は何とか読み通せたということが少々嬉しかった。

2003/10/26

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