二つの祖国 
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長編小説を得意とし、ヒット作を何本も飛ばしている山崎豊子だが、実は作品を読むのは初めてだった。長大な作品が多く、しかもどれも有名なので、どれから手をつけたら…と思っていたのだが、ブックオフで見つけて「二つの祖国」を読み始めた。これは文庫で上中下の3巻。

「二つの祖国」は日系2世の天羽健治を主人公に太平洋戦争と極東軍事裁判を舞台に、数奇な運命を辿った彼ら日系2世の生涯を描いている。

この作品は大きくいくつかのテーマを持っている。太平洋戦争によってアメリカ政府が行った日本人の強制収容について、日系二世によるアメリカへの忠誠心、広島への原子爆弾投下、そして、極東軍事裁判についてだ。

アメリカへ移民した日系人の運命については、戦争が始まり強制収容キャンプに入れられ、そこでの生活を描くことで、非常に分かりやすく伝わってくる。この作品での一番読み応えがあるテーマだと思う。天羽家の三兄弟は、それぞれ違った道を歩む。アメリカへの忠誠心を示すため、日系人部隊に志願し、ヨーロッパ戦線で戦った弟、日本人として日本軍で米軍と戦う弟の忠、そして日本とアメリカという2つの祖国の間で揺れ動くケーン。どの生き方も納得できる。

太平洋戦争が集結し、ケーンが日本に来た後の舞台、中巻から下巻に掛けて、原子爆弾と極東軍事裁判が大きなテーマになってくる。原子爆弾投下を正当化できるのか。極東軍事裁判は勝者による敗者への報復ではないのかとの問いかけだ。

この部分は、別の作品といってもいい。天羽健治は通訳のモニターとして、裁判を公正に進めるべく尽力し、疲弊していく。これは2つの祖国の狭間で苦しむという、最初からのテーマに添ってはいるものの、裁判自体の記述が大部分を占め、主人公の葛藤を描くのであれば、必要がないレベルのディテールになってしまっている。つまり、ところどころに主人公が登場するものの、メインテーマはいつの間にか裁判自体になっているのだ。

極東軍事裁判ではA級戦犯に指定された戦前戦中の日本の指導者が、それまでの行為についての責任を問われる。その是非について、強い主張はないけれど、公人として日本そしてアジアの多くの人々を死に至らせた数々の決断をした指導者たちも、一個人としてみれば妻がいて、子供がいる父であり、その家族という中では悪逆非道なわけではないのである。人間の恐ろしさというのだろうか、それとも国家システムの恐ろしさというのだろうか、複雑なものを感じる。

原爆、裁判が二つの祖国というテーマに絡められて超大作になっているのだが、逆に途中から違う作品を読んでいるような感覚になってしまった。天羽健治を描くという一点に絞って、彼の葛藤を戦後の場面でも描いていれば、もっと良かったのではないかと思う。

大河ドラマならぬ大河小説といって間違いない作品だ。 (2008/11/19)

二つの祖国 山崎豊子

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