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世界の十大小説
W.S.モーム(著)
西川正身(訳)

「世界の十大小説」という邦題がついているけれども、実際にはモームが10人の作家の生涯と、その人生が作品に与えた影響を紹介してゆくというエッセイ集。少々タイトルとのずれを感じたのだが、それもそのはず、もともとのタイトルは「Ten novels and their authors」だったわけで、それを見ればまさにそのままの内容だ。

ここで紹介されている作家のうち、作品を読んだ事があったのは、スタンダール、バルザックといったフランス人作家、ドストエフスキーとトルストイのロシア人の文豪。そして「嵐が丘」のエミリー・ブロンテなど。逆にしらなかったのは、「ボヴァリー夫人」のフローベール、「モウビー・ディック」のハーマン・メルヴィル、「トム・ジョーンズ」のヘンリー・フィールディング、「高慢と偏見」のジェイン・オースティン、そして、「デイビッド・コパーフィールド」のチャールズ・ディケンズだ。どの作家も19世紀の人で、それぞれの作品も読んでみてもよいかなと思わせる内容だ。

それぞれの作品をどう読むのかということよりもむしろ、それぞれの作家の生涯を知る事ができることにこの作品の面白さがある。文豪と呼ばれている人でも、その生涯は問題だらけであったり、完全無欠でないところがイメージを大きく崩させる。モームによる作品の評もなかなか辛辣で、立派な作品にも多くの無駄やダメな部分があると切り捨てている。彼自身も作家だからできる技であろう。

それぞれの作家について語られる分量は多く、読み終えた後には満足感が残る。モーム作品としてみると、この中身の密度の濃さが楽しい。しかし、次に読むべき「世界の十大小説」を知りたいのであれば、これはその目的を達してくれないだろう。

オススメか、そうでないかといえば、ややオススメしない部類に入れてよいかと思う。

岩波文庫
(2007/10/28)

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