「返事はいらない」で宮部みゆき作品も読んでみようという気になったので買ってきてもらった。ボリュームとタイトルのインパクトが一番記憶に残っていたのがこの作品だった。読み始めてから3日ほどで全部読みきった。
カテゴリー的にはミステリー小説になるのだろう。探偵はでてこないが、大部分は事件の謎解きである。背後にある事件の核心に段々近づいていく展開である。
ストーリは最初、記憶喪失になった男女とその隣人、そして、 失踪した少女を探す電話カウンセラーの2つのストーリーの並行からはじまる。記憶喪失の方のストーリーは、パラレルワールドに放り込まれた人間の冒険のような感があり、徐々に新しい世界を認識していくところに面白さを感じた。一方の失踪少女のストーリーの方が「レベル7」の意味をちらつかせる物で、興味は惹かれるものの、好き嫌いで言えば前者の方に軍配を上げる。
予想通りこの2つのストーリーが絡んでくるのだが、時間のすれちがいと場所が段々接近してくるところが面白い。しかし、ストーリーが絡み出してからがあまり良くなかった。読んでいる感覚を例えて言えば、火曜サスペンス劇場を見ているかのような感覚だった。登場人物がずらり勢ぞろいし、順にからくりを暴露していく。やや説明過多な気がした。また最後にどんでん返しも必要以上に多かった。そのようなことから、前半はのめり込んで読めたけれど、後半はダレてしまった。
と批判的な感想になってしまったが、まったく嫌いだとは思わなかった。前回と同様に登場人物が例え悪者でも、極悪度が低いと思ったことと、大半の人物には良心が感じられることが理由だろう。その分物足りないところがあるのかもしれないが、僕はそれでいい。そして、情景描写が特徴的だった。最初の部屋の描写なのは独特で、短い観察を積み重ねることで、読者に風景を伝えている。作者は実際の部屋を見て文章を書いたのだろうか?それとも頭の中で描いた情景を言葉にしたのだろうか?いずれにせよ、大変に細かい描写が風景を思い浮かべさせるのにプラスに作用している。映像的な文章だと言えばいいのかもしれない。
内容はそれほど好きだったとはいえないが、文章のスタイルや登場人物は好きになった。また宮部みゆきの作品を読もうと思う。
(2003/6/3)
