チーム・バチスタの栄光
いつだったか東京でテレビを見ていた時に、作家の本棚を訪ねてみせてもらうという番組があった。その番組に、この作品の著者の海堂尊さんが登場していた。作品を読む前にその人の風貌や本棚を見る事も珍しいのだが、面白そうな気がしたので読んでみる事に。
「バチスタ」という言葉を耳にしたことがあったけれど、それほど一般的な言葉ではなさそうだから、この本のドラマ化、映画化の宣伝で見たのだろう。タイトルの「チーム・バチスタの栄光」は、何とも読みたい心をくすぐるタイトルだ。
読み出しは「あれ?」と思うところもある。ちょっと軽いノリに違和感を覚えたりするものの、読み進めて行くうちに、主人公の田口医師のペースに慣れてくる。「栄光」という言葉からヒーローものを想像していたのだけれど、実は手術に絡むミステリーだということがわかる。それが「あれ?」の原因だ。「チーム・バチスタの栄光」ではなく「悲劇」の方がしっくり来るような気がするけれど、これだと平凡すぎて売れないのかもしれない(1)。
上巻を読み終え、下巻に行くあたりでまたも大きく調和が乱される。あらたな登場人物「白鳥氏」が物語を大混乱に陥れる。アクの強い人物がものすごい勢いで物語を終局に誘う。まさに昇りはゆっくり、そして転がりだしたらあっと言う間に終わってしまうジェットコースターのような作品だった。気がついた時には下巻は読み終わってしまっていた。
そんなわけで十分楽しく読めたけれど、「うわぁ面白かった、また別の作品もすぐに読みたい!」という感じではなかった。医師や官僚の姿を借りているけれど、主要登場人物の2人は、どう読んでも刑事だ。事件解決の後がちょっとダラダラしてしまっていること、この作品の後にも同じ登場人物コンビの作品がありそうだ、つまりシリーズものを意識しているということ、そして、ちょっと現実味が薄いところが残念なところか。
所々に大学病院を取り巻く現代に対する著者の意見が、登場人物の想いの形で語られている。著者はお医者さんだ。一言いわずにはおけないということなのだろうけれど、作品の完成度を考えるとない方がいいんじゃないかなと思う。
(1) まさにそうだったようで、もともとのタイトルは「チーム・バチスタの崩壊」で、「このミステリーがすごい!」の大賞を取って出版される際に現在のタイトルに変更されている。これが売れるセンスなのですねぇ。
(2008/12/18)