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ケインとアベル
「ケインとアベル」は、ジェフリー・アーチャーの3作目の作品である。作品、著者とも名前は聞いたことはあるが、どんな話かは知らなかった。ジェフリー・アーチャーの作品を読むのはこれがはじめて。しかし、なんとなくテレビで「ケインとアベル」らしきドラマの一部を見たような記憶があった。何はともあれ読み始めてみた。文庫版は上下2巻の分量ながら、字はかなり小さめだったので2冊にしては長さはかなり長い方に入ると思う。

この物語は、1906年の同じ日に生まれた2人の男の生涯を綴ったものである。ポーランドに生まれたヴワデク、のちのアベルと、ボストンの裕福な銀行家の家に生まれたウィリアム・ケインの2人の物語が、交互に繰り返されながら物語は転がり始める。出だしの面白さは、ここのところ読んだ本の中で群を抜いていて、一気に読み進めてしまった。

2人はまったく違った子供時代、青年時代を送る。ヴワデクは第1次世界大戦前後の歴史の荒波に運命を左右されながら、過酷な状況を乗り越えて、最終的にはアメリカ・ニューヨークに移民としてやってくる。彼の物語は少々うまく行き過ぎるところもあるが、先の読めない展開、そしてスリル、危機一髪の場面の連続は大変面白い。

逆にケインは裕福な家庭に生まれた金持ちの息子でありながら、幼少期からビジネスマンとしての才能を存分に発揮する。こちらの物語も、単体としてとても面白い。ケインもいくつかの困難を乗り越え、父の銀行を継ぐことに成功する。

アメリカに渡ったヴワデクは、アベル・ロスノフスキと名乗り、ホテルのレストランのウエイターからそのホテルのオーナーへと駆け上り、アメリカンドリームの体現者となる。

ケインとアベルの物語はここでようやくつながることになる。世界恐慌の危機のために、この2人は鋭い対立へと向かい、アベルはその後数十年をかけて、恨みを晴らすべくケインに挑戦していくのが後半のメインテーマとなる。そして、最終的に物語は2人が息を引き取るところもまで続く。

あんまり書いてしまうと面白みを奪ってしまうが、ケインとアベルの対立による悲劇を描いているのかと思いきや、実はそれはほかの物語を進めるための大きなガイドであって、その時々に、ケイン、そしてアベルの二人の周辺に起こる人間ドラマがこの作品の肉に当たる。

読み終わってみれば、エピソードがてんこ盛りの作品を読んでおなか一杯と言いたい。これを1つの作品にせず、ばらばらに書いたら6つ7つ作品ができてしまうのではないかと思うほどに詰め込んだ感がある。娯楽作品としては払ったお金に対して得をした気分になるが、作品の重みという面では逆に勿体無かったかもしれない。

永井淳による翻訳は見事。軽快感のある文章は作品にのめりこむのに一役買っていた。原書の出だしも英語で読む機会があったが、うまく訳せているのだなと思った。

この作品、文学作品を読みたい人にはあえてお勧めはしない。しかし、冒険活劇、スリリングなビジネスを舞台にしたテンポのよい物語を求めているのであれば、なかなか面白い一作となるはずだ。
(2004/07/30)

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