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この国のかたち(1)
実は司馬遼太郎の作品は読んだことがなかった。司馬遼太郎といえば、真っ白な髪に黒い眼鏡のオッサンだよな、そして、サラリーマンに人気があるという印象があった。私は特に歴史小説に対して興味があるわけではないので、特に気にはしていなかったが、たまたま古本屋で見かけた「この国のかたち」を買ってみた。タイトルは有名だ。

ぱっと開いて見たところ、文字が一回り大きい単行本である。そして、連載をまとめて単行本化したのだろうと思わせる短いエッセイが掲載されているものだったから、実のところ中身については期待はしていなかった。どういうものだかさらっと読んでみようという程度の考えだった。

しかし、これは面白い。字が大きいから当然だが、あっという間に読み終わってしまったし、読み終えたところですぐに第2巻を買いに走った。この調子なら2巻もすぐに読み終わるに違いない。

私はエッセイ集でここまで面白いものを見たことがない。主に歴史上の人物、出来事をベースに日本という文化、国のことを述べていて、主に幕末から明治維新、戦国時代、そして仏教伝来あたりにまつわる話が主なのだが、その話の伝え方が実に上手い。内容からすると、かなりの研究がこれを書く裏にはあるはずなのだが、その知識をひけらしている厭味や、知ったことをすぐに知ったかぶりをして述べている安っぽさが微塵も感じられない。その上、話が実にわかりやすく、そして興味深く書かれている。

解り易い文章を書けると言う事は、中身をよく筆者が理解しているということだ。そして、それを易しく説明できるだけの力量があるということである。それをたったこの1冊の本を読んで感じてしまい、尊敬の念を抱いた。

そして、昔の人物、風俗を見つめる目のやさしさ、そして物事の良いところを見つめるという姿勢がこのエッセイ集を読み心地の良いものにしているに違いない。

久々に文句無しに誰にでも勧めたいと思うものに出会った。もちろん、この本の続きは読むし、他の作品も読んでいきたい。特に、この本でちらっとエピソードが紹介されていた高田屋嘉兵衛を主人公にした「菜の花の沖」を是非読んでみようと思う。

(2004/05/15)

2巻も続けて読んでみたが、1巻ほどのインパクトはなく、1巻に比べるとやや平凡な印象を受けた。しかし、3巻では盛り返している。やはり明治維新のあたりのエピソードはかなり緻密で面白い。

歴史の教科書は、古代から現代までを凄まじい勢いで駆け抜けていく。鳥羽伏見の戦い、何年。といったあっさりとした記述でしかないが、その裏にはそこにいたる経緯がある。同じ出来事も、注目する人物によって果たした役割が違う。「この国のかたち」は、毎回、ある人物、ある集団に着目し、その人物・集団が果たした歴史上の役割をわかりやすく語っている点が面白いのだと思う。

「この国のかたち」
文春文庫

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